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【コラム】

 

戦略的人脈マネジメント(その2)

 前回、社会関係資本の持つ意味について解説し、理系の生涯賃金が文系のそれを下回ることについて、社会関係資本が個人評価に加味されていることに原因を求めた。今回は、さらに社会関係資本について考察を加え、「なぜ理系(=技術職)は社会関係資本が弱いのか」を数理社会学の手法を用いて定性的に説明してみたいと思う。
昨今隆盛になってきた数理社会学によれば、社会関係をモデル化するのに、各人をノードで、その関係をtie(紐帯)で表現する手法が用いられる。即ちAさんとBさんに友達関係が成立しているとしたとき、A−Bと表現することができる。これは人間が増えても同じである。Bさんの友達にCさんがいれば、A−B−Cと表現される。さらにAとCも友達であるなら、A,B,Cは三角形の各頂点を占める図が描かれることとなる。
例えば、あなたの所属する研究室を例に、図を作ってみて欲しい。例えば、「彼の仕事の内容を第三者に説明できる」を関係がある基準としたときに、あなたの周りにどのような図が描けるだろうか?隣の研究室の研究内容を、あるいは下の階にいる人の研究内容を説明することができますか?
最も単純な考えを取れば、関係のある人の人数が多ければ多いほど、その人の持つ社会関係資本は大きいといえる。例えば3人しか友達がいないよりも30人の友達を有している人の方が、研究をする上で様々な協力を得ることができるので有利だといえる。
しかし、以下のようなシチュエーションを想定してみて欲しい。Aさんは、生産ラインに落とし込むのも間近な研究室で、30人のチームを組んでいる。あとはもう生産条件の最適化を行うだけなので、毎日膨大な量の実験をこなさなければならず、同期ともゆっくり話している間もない。従って、上記の基準で考えれば関係者は同じ研究室の29人である。
一方Bさんは、長年新規開発部門に所属していて、最近になってやっと3人のチームを編成し、研究プロジェクトとして滑り出したばかりである。解らないことだらけなので、他の研究室にもちょくちょく顔を出しディスカッションを繰り返している。従って、上記の基準によれば、関係者は自分のチームの2人と他の研究室のもろもろ15人と合わせて、17人にしかならない。
はたして、このときの2人の社会関係資本はどちらが豊かだと考えられるだろうか?Aさんの29人に対してBさんは17人なので、単純にAさんの方が豊かである、といってしまっていいのだろうか?

実は、社会関係資本の豊かさについては、先ほどの図の構造(トポロジー)が深く拘わっているのである。ビジネスにおける社会関係資本とは、前回説明した様に付加価値そのものであり、それは即ち問題解決を与えてくれる情報のことなのである。
具体例で考えてみよう。Aさんが生産ラインのある問題で四苦八苦していたとしよう。しかし、Aさんには同じ研究室にしか関係者がいないため、別な角度からの検証をすることができず、問題解決を全て自分の手で行わなければならない。一方Bさんは、他の研究室の15人とつながりがあるため、その問題解決ができそうな研究室の友人に聞くことができる。たとえその友人が解決できなくても、その研究室の他のメンバーに聞いてもらうことで、問題解決に結びつけることが可能となる。すなわち友人の属する15の研究室の知的資産をも問題解決に役立てることができるのである。このことは、別々の研究室に属する15人の友人を持つBさんは、研究室の29人の友人を持つAさんよりも、優れた社会関係資本を有している、ということを示しているのである。
こと仕事上に限定して言えば、同じ職場よりも異なる職場の人との人間関係を作っていくことが、豊かな社会関係資本を育てるための基本である。(須賀)

 

 

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